【第1部】なぜコントロールできないことに囚われてしまうのか?
[シリーズ進行状況]
第1部:理解(◀今ここ) → 第2部:実践 → 第3部:応用
どうにもならないことに悩んで、思考も時間も消耗してしまった経験、あなたはありませんか?私は過去に数えきれないほどあります。
会社の方針が急に転換した、他部署に仕事の成果を横取りされた、上司や先輩の反応が期待していたものではなかった。会社員として働いている中で、これらに一度も直面したことのない人はおそらくいないでしょう。仕事に限った話でもありません。
私も新入社員の頃は自分の思い通りに行くものだと思い、この高い高い壁にぶち当たり、挫折したことを思い出します。長年働いている中でこうした現実を嫌でも理解していくものだとは思いますが、やはり苦しいものです。
そんな時に出会ったのが、松井秀喜さんをはじめ多くのことを成し遂げた方々が語る言葉でした。
「コントロールできることとコントロールできないことを明確に分けること。そして、コントロールできることに集中し、コントロールできないことは無視することが大切。」
私も社会人3年目の頃に知り、衝撃を受けた記憶があります。
そして実践しようと試みるのですが、これがまた難しい。しばらく経つと同じように「コントロールできないこと」に囚われて悩んでしまうのです。
今回は知っていても実践の難しいこの思考整理について、自分の血肉にするための方法について考えてみたいと思います。
囚われている時と集中できている時の違い
まず、なぜこの考え方が重要なのかを体感レベルで理解するために、自分の状態を振り返ってみましょう。
【NG状態】コントロールできないことに囚われている時
私自身の経験を振り返ると、コントロールできないことに意識が向いている時は決まって以下のような状態になります。
■ 不平不満が出る
「なぜあの人はあんなことを言うのか」「会社の方針がおかしい」といった愚痴ばかりが頭を占める。ネガティブなエネルギーがどんどん増幅していく感覚です。
■ 手元の作業が進まない
気になることが頭にあると、目の前のタスクに集中できません。結果として現実的な遅延や失敗につながり、さらにストレスが増える悪循環に陥ります。
■ 無駄な行動に走る
変えられないことを変えようとして、効果のない行動を繰り返してしまいます。相手の気持ちを変えようと必死になったり、環境のせいにして愚痴を言い続けたり。
■ ストレス・イライラがピークに
精神的な消耗が激しく、些細なことでもイライラしやすくなります。家族や友人にも当たってしまうことがあり、自己嫌悪がさらに重なります。
【OK状態】コントロールできることに集中できている時
一方で、コントロールできることに意識を向けられている時は、明らかに状態が違います。
■ 精神的に安定する
心の土台が整う感覚があります。外部の出来事に一喜一憂することが減り、落ち着いて物事を考えられるようになります。
■ 冷めた目で現実を見られる
感情的にならずに状況を客観視できます。俯瞰的な視点で物事を捉えられるため、本質的な問題が何なのかが見えてきます。
■ 建設的な手を打てるベースができる
心が落ち着くと、次に何をすべきかが自然と見えてきます。この「行動のスタート地点」に立てることが、すべての改善の始まりだと実感しています。
なぜ区別することがこれほど重要なのか
この違いを理解すると、なぜコントロールの区別が重要なのかが腑に落ちてきます。
[重要な理由]
1. そもそも意味がないから
当たり前のことですが、コントロールできないことに悩んでも現実は変わりません。しかし頭では分かっていても、感情レベルで納得するのは別の話です。
2. 時間とエネルギーの最適化
人は有限の時間・エネルギーしか持っていません。できないことに力を割くと「本来進められること」に割くリソースがなくなってしまいます。これは投資のポートフォリオ管理に近い感覚だと思います。
3. 判断スピードが上がる
「これは自分にコントロールできない」と割り切れると、悩む時間が減ります。意思決定のスピードが上がり、余計なストレスや迷いも減ります。
4. 人間関係の摩擦を減らす
他人の気持ちや評価はコントロールできません。これを分けて考えられる人は、無駄に相手を変えようとせず、結果として関係が落ち着きやすいです。
5. 対応策が見えてくる
逆説的ですが、「コントロールできないこと」をはっきりさせることで、「じゃあ自分ができることは何か」が明確になります。結果として、本来は変えられないと思っていたことへの対応策が見つかることもあります。
精神安定が先、効率的な行動は後
ここで重要なのは順序です。まずメンタルを安定させること、その上で現実的に効果的な行動を進めることです。
【重要な順序】
① メンタルを安定させる(コントロールの区別)
② 効果的な行動を進める(具体的実践)
精神的に揺らいでいると、いくら効率的な手法を知っていても結局うまく回りません。「コントロールできるか否か」で切り分けるのは、まさにこの心の土台作りに直結しています。
心が落ち着いた状態になって初めて、エッセンシャル思考のようなシンプルなフレームワークが本当の力を発揮します。
今日からできる小さな一歩
この記事を読んで「確かにそうだな」と思った方は、まず今抱えている悩みを一つ思い浮かべてみてください。
そして自分に問いかけてみてください。
「これは自分が直接行動して変えられることだろうか?」
もし答えがNoなら、一度その悩みを横に置いてみる。完全に忘れる必要はありませんが、今日一日はそのことを考えるのをやめてみる。
その代わりに「じゃあ自分ができることは何だろう?」と問い直してみる。
[今日の実践]
ステップ1: 今の悩みを一つ選ぶ
ステップ2: 「変えられるか?」と自問
ステップ3: Noなら横に置き、「自分ができることは?」と問い直す
小さな実験ですが、これだけでも心の状態が変わることを実感できるはずです。
次回の第2部では、この区別をより具体的に、日常で使える実践法として整理していきます。見分ける技術と、それを習慣化するためのコツについて詳しくお話しします。
[シリーズ『コントロールできることに一点集中』の実践法]
第1部: なぜコントロールできないことに囚われてしまうのか?(この記事)
第2部: 見分ける技術と日常での実践法(次回)
第3部: 他人の評価に振り回されない心の持ち方(最終回)
Photo by Minh Ngọc (@ngocntmn) on Unsplash
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